Hitoshi Nakazato – Line Outside Series
1999年9月24日~11月6日
「……1992年までに中里がこの時代で最高のカラリストの一人であることは明らかになっていた。彼の作品は、常に一分の隙もなく構成され、色はより知的に並置され、ある種の官能性に満ち、作品に独特のバランス感覚を与えていた。」
サンドラ[エリクソン]アシュフォード
はじめに
中里斉は数十年にわたり、フィラデルフィアの美術界に影響を与えてきた。彼は主に、ペンシルヴァニア大学の美術教授として、また学部長として、長い間、有効なリーダーシップを発揮してきた。それ故、この国際的に認められているアーチストの個展を、彼が甚大な貢献をしてきたこの町で開催できることは、エリクソン・ギャラリーにとって大変喜ばしいことである。
私が初めて中里の作品に出会ったのは、1980年代後半、彼の絵が大きく変容しつつあるときのことだった。モノクロの場に色をまばらに置いた、キャンバスの綿密な構成が、緩み始めていた。色の組み合わせがより複雑になり、塗布された色がより液状化した。1992年までに中里がこの時代で最高のカラリストの一人であることは明らかになっていた。彼の作品は、常に一分の隙もなく構成され、色はより知的に並べられ、ある種の官能性に満ち、作品に独特のバランス感覚を与えていた。
実際、中里のバランスは、彼の作品についてのあらゆる記述に一貫したテーマを再現している。ジーン・バロにとってこのバランスは、彼がバランス(均衡)のとれたアンバランス(不均衡)と呼ぶものに由来し、私たちが何を見ているのかという疑問を投げ掛ける。エドワード・フライは、この特性を解明して、アメリカの近代美術と日本の伝統的なフォームの両方が、そのどちらも変容してそれぞれ新しい形態となる、アーチストの弁証法的回答、とした。竹田すみ子は、中里の西洋と東洋の哲学への興味、そのバランスについて指摘している。
この個展に展示された新作は、1997年に始まった中里の「線外シリーズ」の続作である。この類稀な一連の作品は、観念と色彩の両面における中里の力を明らかにし続けている。美術評論家のジェリー・ソルツは、このシリーズに関する最近の評論の中で、このシリーズを「視覚的知的ラプソディー」に例えている。「2元性が一体化するラプソディー、無秩序(カオス)と統合、半透明性、浸透性、炭色とくすんだ色、ニューヨーク絵画、キモノ、思考性と装飾性、雲と形の影、空気と大地、そして絵画のエクスタシーに対するラプソディーである」と。どうやら中里は、彼が自分で思っている以上に仙厓の心境に近づいているようである。
サンドラ[エリクソン]アシュフォード、美術史学者